衣服のようにしなやかな建築を実現

ーphoto M.Tー

世界的なファッションブランドが使っている素材も手掛ける小松精練という会社がある。繊維の産地、石川県に本拠を構え、75年の歴史を持つ繊維メーカーだが、炭素繊維を使った建材などを開発し、普及に乗り出している。「小松マテーレ」への社名変更は、繊維だけでなく、幅広い素材を手掛ける会社を目指す決意の表れだ。

建築家の隈研吾氏も認める新素材

建築家の隈研吾氏は、炭素繊維複合材料「カボコーマ・ストランドロッド」の将来性に期待を寄せる。炭素繊維複合材は、飛行機や自動車にも使われる世界に誇るメード・イン・ジャパンの材料だ。「軽い」「強い」「錆びない」という特徴があり、さまざまな分野での用途拡大が続いている。

日本の伝統産業である組紐の技術と、現代の炭素繊維の技術を融合した「カボコーマ」を、ロープ状にねじった(ストランドロッド)炭素材料であることから「カボコーマ・ストランドロッド」と名付けた。

小松精練(小松マテーレ)は隈氏と連携し、寺社仏閣などの伝統文化財の修復や耐震補強技術として、「カボコーマ」を活用している。2017年1月には、国の重要文化財「善光寺経蔵」で、カボコーマを採用した修復作業を実施した。端部の接合がやりやすいうえ、軽量だから現場の作業も軽減されたという。

日本の伝統文化財を守る素材に

日本には、経年変化に対する修理・復元の対応が必要な伝統文化財が全国各地に多い。また、近年は大規模な自然災害が多発している。地震大国に日本では、耐震補強は重要な課題だ。炭素繊維は、木との相性も良く、修理や補強をする際に、景観に配慮しながら、昔ながらの木の質感、ぬくもり、伝統を残すことが可能になるという。

耐震改修促進法では、増床とみなされなければ炭素繊維を耐震補強材として用いることができる。一方で、原稿の建築基準法では、建造物の柱や梁、土台部分などに使用する構造材として炭素繊維を用いることは認められていない(2018年9月時点)。

こうした規制が建築分野での炭素繊維の活用を阻んでいるが、カボコーマが日本ではじめて、耐震補強材として国内標準(日本工業規格:JIS)化されることで、普及に弾みがつくとの期待は大きい。丈夫さとしなやかさを併せ持つ建材の将来性に注目だ。
(神社の写真と記事は関係ありません。)

■コンクリエを主宰する小島清利は、週刊エコノミスト(2018年9月25日号)で、小松精練(小松マテーレに社名変更予定)の池田哲夫社長を取り上げた経営者インタビューの構成を担当しました。

小島清利

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